コーナーキックの場面で、頭の上でぐるぐる回しているタオル。あそこに描かれているマークの意味を、どれだけ説明できるでしょうか。
サンフレッチェ広島のエンブレムは、タオルだけでなく旗やユニフォーム、スタジアムの看板でも見かけます。サッカーゲームの中の表示にも、InstagramやXの公式アカウントのアイコンにも使われています。最近は広島駅の構内でも見かけるようになりました。これだけ日常的に目にしていながら、私はパーツひとつひとつの意味までは考えたことがありませんでした。
調べてみると、あのエンブレムは4つのパーツで構成されていて、それぞれに意味が割り当てられていました。1つずつ紹介していきます。4つ全部を言える方は、なかなかいないと思います。
1つ目:三本の矢
エンブレムの中央で交差している3本の矢。これは何を表していると思いますか。
ここはほぼ全員が正解できるはずです。広島に縁の深い戦国武将・毛利元就の「三本の矢」の故事です。1本なら折れる矢も、3本束ねると折れにくい。元就が3人の息子(隆元・元春・隆景)に結束を説いたとされる、あの逸話です。クラブ名の「サンフレッチェ」自体が、日本語の「三」とイタリア語で矢を意味する「フレッチェ」を組み合わせた造語になっています。
ここまでは私も知っていました。ただ、調べていくと知らない話がいくつか出てきます。
ひとつは、クラブ名の決まり方です。チーム名は公募されていて、県花のモミジや赤といった案も集まったなかで、三本の矢にちなんだ「スリーアローズ」が候補に挙がりました。ところがこの名前はすでに商標登録されていて使えず、それをもじる形でスタッフ会議で作られたのが「サンフレッチェ」だったそうです。日本語とイタリア語が混ざった不思議な語感には、そういう経緯がありました。
もうひとつは、「三」に重ねられた意味の数です。公式の説明では、三本の矢は3つのことを同時に表しているとされています。
- 広島の県民市民・行政・財界が三位一体でクラブを支えていること
- チームスポーツの基幹をなす「技術・戦術・体力」の三要素
- 個々の選手に必要とされる「心・技・体」の三原則
さらにエンブレムのパーツとしては、相手を圧倒する力強い攻撃も表現しているとされています。地域・チーム・個人という3つの層に、それぞれ「三」が割り当てられている構造でした。
2つ目:王冠
矢の上に乗っている王冠。これは何を表していると思いますか。
こちらは想像がつきやすいと思います。答えは「王者を目指し、王者として君臨する姿勢」です。
同じ発想は、クラブの別の場所にも顔を出します。女子チームの呼称である「レジーナ」は、イタリア語で「女王」を意味する言葉です。王者を目指すという方向性が、エンブレムのパーツにもチーム名にも共通して置かれていることになります。
なお、王冠については公式の説明以上の情報を見つけられませんでした。デザイン上の由来などが分かれば追記したいところです。
3つ目:盾
エンブレムの土台になっている盾。これは何を表していると思いますか。
「力強さ」や「守備の硬さ」あたりは、多くの人が当てられると思います。実際、公式の説明でも力強さと強固な守備を表すとされています。
驚いたのはその先でした。盾に入っている縦のラインは、広島市内を流れる6本の川を表しているそうです。具体的には次の6本です。
- 猿猴川
- 京橋川
- 元安川
- 本川(旧太田川)
- 天満川
- 太田川放水路
広島市の中心部は、太田川が運んだ土砂でできた三角州の上にあります。街の中を何本もの川が流れているのはそのためで、原爆ドームの対岸を流れる元安川もこのうちの1本です。
そして調べていて一番意外だったのは、この「6本」が自然にできた数ではないことでした。もともと市内を流れる川は7本ありました。下流の洪水を抑えるために、西側の流路を広げて太田川放水路を通す工事が1932年に始まり、戦争による中断をはさんで1960年代に完成します。これによって川は6本に整理され、それまで太田川と呼ばれていた流れは「旧太田川(本川)」と呼ばれるようになりました。
つまりエンブレムの縦のラインは、広島の地形をなぞっただけのものではなく、水害と向き合ってきた工事の結果として残った本数ということになります。私自身、広島で暮らしていた時期に何度も渡っていた川がここに描かれていたことを、今回まで意識していませんでした。
4つ目:つた
盾の外側を囲むように描かれている、つたの模様。これは何を表していると思いますか。
答えは「クラブを支えるサポーター」です。
矢も王冠も盾も、クラブ自身を表すパーツでした。その全体を外から囲んでいるのがサポーターという構図になっています。タオルを掲げている人間が、そのタオルに描かれた意味の一部として入っている、ということでもあります。
パーツは4つ、意味はもっと多い
整理すると、サンフレッチェ広島のエンブレムは、三本の矢・王冠・盾・つたの4つで構成されています。ただし中を開けると、三本の矢だけで3つの解釈があり、盾の中には6本の川がある。パーツの数よりも、詰め込まれている意味の数のほうがずっと多いことになります。
このデザインになったのは2005年シーズンからで、「クラブ理念」「クラブ設立の目的」「広島らしさ」を表現したものへ変更されたと説明されています。私が物心ついたときには既に今の形だったので、変更前のエンブレムはあまり覚えていません。
4つのうち、いくつ知っていましたか?
この話、飲みの席で「エンブレムのパーツ4つあるけど全部言える?」とか、スタジアムに向かう電車の中で、タオルを広げて「この縦の線、何だと思う?」とクイズを出してみるのもいいかなと思いました。
4つ全部を知っていた方は、次はぜひ隣の人に出題してみてください。次にエンブレムを見た時には、見え方も少し変わっているかもしれません。

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